フトアゴヒゲトカゲの基礎知識

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フトアゴヒゲトカゲの基礎知識

2024年2月19日

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フトアゴヒゲトカゲの基礎知識

2024年2月19日

はじめに

フトアゴヒゲトカゲは、他の多くの爬虫類に比べて飼い易く、大人になった時の大きさも比較的小柄で、初心者向けの爬虫類としてとても人気があります。

怒ると喉を真っ黒にして膨らませる姿がアゴ髭のように見えることから、フトアゴヒゲトカゲと名付けられ、フトアゴの愛称で呼ばれています。
トゲトゲしている見た目からは想像が難しいですが、トゲはゴムのような触り心地で性格は温厚です。また原産地が砂漠が多いところであるためとても丈夫です。

原産地はオーストラリア中央部~南東部の乾燥地帯と言われています。夏の平均気温32℃、冬の平均気温15℃の乾燥地帯で森林から砂漠にかけて、様々な環境に生息します。品種(モルフ)も15種類以上おり、オレンジの個体から真っ白の個体まで様々な色のフトアゴがいます。

このページではそんなフトアゴの基本的な情報と飼育方法を軽く紹介します。

種の概要

通称:フトアゴヒゲトカゲ(フトアゴ)

学名:Pogona vitticeps

分類:爬虫綱 有鱗目 アガマ科 アゴヒゲトカゲ属

大人の大きさ:全長50cm前後

体重:380~510g

寿命:5~7年程度(飼育下で15年以上生きた個体もいる)

食性:子どもの時は主に昆虫食 大人になるにつれて野菜中心になる

性質:昼行性 単独飼育がおすすめ 自切はしない

 

フトアゴの特徴5選

日本ではフトアゴと呼ばれるフトアゴヒゲトカゲは、爬虫類の中では飼育が簡単とされており、初心者から玄人まで人気があります。

  1. 昼行性のトカゲのため、比較的人間と同じ活動時間で可愛がれます。首を傾けたり、あごを膨らませて怒ったりと表情が豊かです。
  2. 噛みつきにくく、普段は動きがとてもゆっくりです。稀に驚いたときや怒った時などに「しゅー」と鳴きながらあごを膨らませ威嚇することがありますが噛むことはほとんどありません。
  3. ハンドリングしやすく、ある程度手のひらで遊ぶことができます。但し、過度なハンドリングはストレスを与えることがあるため、1日5分から10分程度を上限に生体の様子を見ながら行うことをお勧めします。
  4. アゴを膨らませて頭を上下に振る行動をボビング(ヘッドボビング)と呼びます。 ボビングは威嚇や何かしらの意思表示をしたいときに行います。
  5. 鼻えのきを取ることができます。鼻えのきとは 、鼻の穴部分にできる脱皮が、キノコのえのきにそっくりな現象です。ピンセットで取れた時はなんとも言えない気持ちになります。

飼育ケージ

1匹のレオパを飼育するのにサイズ縦80.0cm×横40.0cm×高さ40.0cmのケージが最小限の大きさです。もちろんより大きなケージが望ましいです。基本的には単独飼育で繁殖に取り組みたい時のみオスとメスのフトアゴを数時間~2日間程度一緒のケージで飼育してください。

フトアゴは運動が好きなため、流木などを使って活動範囲を広く取ってあげると良いです。

1日1回ケージ内の糞を確認し、取り除きます。半月に1度はケージ内の物をすべて取り出し、床材を交換し、アルコールなどで消毒することをおすすめします。アルコールを使った後はすぐにフトアゴを戻さず、一度水拭きしてしばらくしてから戻すようにしましょう。また、全体を掃除した後はおかしな動きや普段と違う動きをしていないかを十分に確認してください。

フトアゴの床材はソイルや砂、ヤシガラ、キッチンペーパー、ペットシーツなどがあります。好みの物を選択して使用してください。

フトアゴが脱皮不全や便秘を起こしてる際は、浅い入れ物にお腹がつかるようにぬるま湯(35度程度)をいれ、10~15分間浸すことで対処できることがあります。それでも良くならない場合は速やかに近くの病院に診てもらいましょう。

紫外線について

爬虫類ではしばしば紫外線を必要とする子がいます。フトアゴは昼行性のため、紫外線ライト(UVB)が必要です。カーテン越しの太陽光では必要なビタミンD3が合成しきれずクル病などになる可能性があります。紫外線ライトは12時間あてることを推奨しているサイトが多いですが太陽光がどのくらい入るかやベランダ、庭などに長時間出せる方は都度調整してください。また、紫外線ライト以外にも体を温めるためのバスキングライトや保温球などが必要です。

温度と湿度

ケージ内が15度を下回らず、35度を上回らなければ基本的には問題ありません。フトアゴに限らず爬虫類は温度勾配がとても大事です。ケージの中で20度の場所があれば35度の場所もあるのが理想的です。この温度勾配を出すために、ヒーターを敷いたりライトを取り付けたりすると良いです。フトアゴが入る可能性のある入れ物(シェルターなど)の下にはヒーターは敷かないように気を付けましょう。入れ物の中は温度が高くなりやすいため、気が付いたら50度だったなんてこともあります。また、ヒーターはケージの全体には敷かず3分の1程度に敷くことをおすすめします。これはケージ内で温度の差をつけるために有効的です。管理が可能であれば、夜は23度~25度程度まで温度を下げると日中と夜間の温度差をつけることができます。

湿度は、60~70%に保ち、フトアゴが入る入れ物の中は湿度を高めにすると良いです。湿度が低すぎると脱皮不全の原因になり、指の切断などの病気に繋がることもあります。

ケージ内に入れられる大きさの温湿度計がありますので、購入しておくことをお勧めします。

フトアゴは成長に伴い食性が昆虫メインから野菜メインに変わるため、成長に合わせて餌を変えていく必要があります。コオロギやデュビア、ミルワームなどを与えます。産卵後のメスのフトアゴにはピンクマウスを与えるのも効果的です。40cmほど(アダルト)になるまでは毎日食べるだけの昆虫を与えると成長が早くなります。特にフトアゴは成長が早く数gしかなかった子が3か月後には30gだったなんてこともあります。生餌を与える場合、コオロギやミルワームなどがフトアゴの内臓を傷つけないように頭をハサミなどで切り取ると良いです。そのまま与えてしまうと、お腹の中でコオロギなどが噛みつき内出血を起こしてしまうことがあります。大人になったフトアゴには、1週間に2度ほどコオロギやデュビアなどを数を決めて与えると良いです。数字的な目安は個体にもよりますが、減った体重と同量の餌を与えると良いです。野菜は小松菜(ただしアブラナ科の野菜は甲状腺に作用し肥満になりやすい)、ニンジン、オクラなどが定番です。人工の飼料もあるため様々な餌を与えると良いでしょう。

8cm~13cmになるまでは昆虫7割野菜3割を目安に与えます。→13cm~20cmの間は昆虫と野菜を半々で与えます。→20cm~40cmの間は昆虫1割野菜9割で与えます。→40cmからは昆虫5%野菜95%で与えます。あくまでも目安として考えてください。ただし、アダルトの個体に昆虫を多く与えすぎると肥満になり、寿命に直結してくるため注意が必要です。

補足

フトアゴに昆虫を与える24時間以内に、餌に餌を与えるガットローディングを行うことをおすすめします。通常、昆虫は長時間栄養を体に留めておくことができないため、普段はラビットフードなどで管理し、餌として与える24時間以内に野菜やゼリーなど栄養価の高い餌を与えます。また、カルシウムの粉末を餌にする昆虫に添加します。何回かに1度の餌には、ビタミンD3も一緒に添加すると、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。カルシウムは過度に与えると腸閉塞などを引き起こすことがあるため、成長に合わせて量や頻度を減らすことをおすすめします。

カルシウムやビタミンの粉末はお皿の上に置いておくと必要に応じて、フトアゴが舐めることもあるため、ケージ内に置く余裕があれば置くことをおすすめします。

代表的な病気5選

フトアゴは非常に強い種類の爬虫類ではありますがいくつかの病気にかかることがあります。代表的なものを5つ紹介します。これ以外にも多くの病気があるため、様子がおかしいと思ったら自己判断せずすぐに病院に診てもらいましょう。

  1. クル病(代謝性骨疾患):フトアゴで最もよく聞く病気で骨が変形してしまう病気です。主にカルシウム不足とUVB不足により起こります。必ずUVBライトを導入し、カルシウムを与えるようにしましょう。カルシウムを与えていても、リン(主にミルワームに多く含まれる)などの摂取によりうまく体内に吸収されず起こってしまうこともあります。
  2. 細菌感染:細菌感染によって下痢を引き起こしたり餌を食べなくなったりします。餌を食べているのに体が細くなったり、下痢をしていたりする場合はフトアゴまたは乾燥していない糞を病院にもっていくことで検査してもらえる場合が多いです。主に体調を崩していたり、ケージ内が清潔ではなかったりするときに起こりますが、ペットショップやブリーダーから爬虫類を連れてきたときに元々感染しており、他の子に感染してしまうこともあります。通常の細菌や虫であれば駆除できますが、取り除くことが難しい細菌や寄生虫も存在します。
  3. 呼吸器感染症:フトアゴは肺炎を含む様々な呼吸器系の病気にかかります。鼻腔や口から呼吸音がしたり、粘液の泡が口から出ている場合は呼吸器に問題を抱えています。個人では治すことが困難なため、ケージ内を清潔に保ち、速やかに病院に行きましょう。
  4. 脱皮不全:他の爬虫類同様、フトアゴも栄養不足やケージ内の湿度不足によって脱皮不全を起こすことがあります。特にフトアゴの場合は目や指先に起こりやすいです。ぬるま湯につけ、綿棒などで優しくなでるようにすると残った皮を取ることができます。発見が遅れると手が壊死してしまったり視力が低下してしまったりするため、脱皮の兆候が見られたらよく観察するようにしましょう。
  5. 肥満:アブラナ科の野菜や高カロリーな人工飼料、昆虫をアダルトの個体に多く与えることでなりやすいです。肥満になると下痢や嘔吐などを繰り返す可能性があります。嘔吐してしまうと心配でついつい追加で餌を与えたくなってしまうと思いますが、吐くことは相当なストレスなため、何日か餌を控えましょう。

フトアゴを飼う前に注意する事

フトアゴは初心者向け爬虫類の中でもケージ以外の設備をある程度揃えないと飼育ができない子です。電気代がかかるからや設備にお金がかかるからとフトアゴにとって良くない環境で飼育することはないようにしましょう。また、当たり前のことですが、環境の変化や飽きたからもういらないなどが無いようによく考えてから飼育するようにしてください。

フトアゴは比較的人工飼料で飼育できます。ペットショップやイベントなどで一部の方から人工飼料だけで飼育ができますと言われるかもしれません。ただし、「今」人工飼料や冷凍の餌を食べていたとしても、いつかは生きた餌(生餌)しか食べなくなることもありますし新鮮な野菜を求めるかもしれません。人工飼料で飼えるなら良いか~と安易に飼わず、一度冷静になって生餌を扱えるか考えましょう。特にネックになってくるのが爬虫類に関心のない家族の説得です。後々問題にならないようによく話し合うか、独り立ちしてから飼育を始めましょう。

生体の健康に気を付ける必要もあります。先に記述した2つの項目が守れる方は、手足がしっかりしており、首や頭が大きい個体を探しましょう。また、子供のときの柄と大人の柄は成長と共に変化することもあります。子供の時の柄がかわいいからと飼育を始めた後に柄が変わってしまっても最後まで飼育するようにしてください。飼育することを決断した際、同じ店舗内の別の個体もしっかり見て、やせ細っている子がいないか、極端に調子が悪そうな子がいないかなども確認するようにしましょう。店舗で寄生虫や細菌が発生していることもあるため、しっかり確認しましょう。

飼育に自信がない方や初めての方は生まれたばかりの子供ではなく大人のフトアゴを飼育することをおすすめします。餌の頻度や温度、湿度の調整、先天的に持っている障害などがわかりやすく、飼育しやすいことが多いです。

よくある質問

フトアゴはなつきますか?

フトアゴに限らず、爬虫類がなつくことはありません。餌の時間や飼い主を覚えて近づいて来ることはありますが、犬や猫のようになついているわけではなく、慣れているだけです。それでも愛嬌があるため、かわいいと思います。個体によっては人間がいる間は完全に隠れて出てこない子などもいます。カメラを設置するなどして餌を食べているかを確認してください。

 

フトアゴは野菜や果物を食べるの?

子供から大人になるにつれて肥満にならないように野菜を与える必要があります。アブラナ科の野菜は甲状腺に作用し肥満になりやすいため注意が必要です。玉ねぎ・ねぎ・ブロッコリー・ほうれん草などは与えないようにしてください。特に玉ねぎやネギは赤血球を破壊する中毒症状を起こします。部屋を歩かせる際はキッチンなどに切りくずが落ちていないことをあらかじめ確認しましょう。

 

フトアゴが噛むことはあるの?

基本的には噛まないと記述しましたが、噛むこともあります。交尾中に手を出す、メスを触った手でそのままオスを触ろうとした際に噛まれることが多いです。他にも威嚇しているのにも関わらずそのまま手を出し続けている場合も噛まれることがあります。サルモネラ菌などが傷口から入る可能性があるため、噛まれたらすぐに流水で傷口を洗い流すようにしてください。異変を感じたら人間用の病院に行くようにしてください。

 

フトアゴの脱皮の頻度はどのくらい?

子供のフトアゴは数日~数週間に1度脱皮します。大人になるにつれて脱皮の頻度は減り、最終的には1~2か月に1度程度に落ち着きます。脱皮前は普段よりも白くなるため、真っ白な子を除いてすぐにわかると思います。白くなってからは1~2日以内に脱皮します。脱皮不全がないかハンドリングしながらよく見てあげてください。脱皮前にハンドリングをしたり、脱皮を毎回手伝ったりするとフトアゴだけの力で脱皮ができない子になる可能性があるため、脱皮が終わるまでは温かい目で見守ってあげてください。

最後に

フトアゴは爬虫類初心者の強い味方であると同時にかけがえのない1つの命です。値段や飼育のしやすさで安易に決めず、人間の子供を1人育て上げるくらいの気持ちで飼育を始めてください。覚悟を決めて飼育を始めたあなたは、爬虫類の沼から抜け出せず、爬虫類の奴隷になっていると思います。楽しい爬虫類ライフを送ってください!

今後フトアゴの品種(モルフ)や飼育用品などを紹介したページなども随時準備予定です。他の爬虫類も少しずつ紹介していきます。

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